第41回:日本における知財流通ビジネスの現状と将来(吉井重治さま、株式会社 IP Bridge、代表取締役社長)

日本の知的財産流通の現状と将来

株式会社IP Bridge
代表取締役社長 吉井重治

 

小泉首相のリーダーシップの下に知財立国宣言がなされ、いろいろな施策がなされてきましたが、知財流通の指標となりうるライセンス収入は、米国や欧州と比べるとかなり見劣りがします。その原因を施策の問題や省庁間の連携のなさに求める見解が多いですが、そもそも知財流通の主役である企業の経営者の知財に対する意識の低さを問題にすべきではないでしょうか。

知財は、企業において重要な資産です。研究開発に多くのコストと時間をかけて創出する知財ですが、バランスシートにおけるその評価はゼロとして計上されます。他社から購入した場合のみその購入価格が無形固定資産として計上されます。有形固定資産である土地・建物は時価で評価されますから、それらを有効に活用していないと担当役員の責任問題となりますが、評価ゼロとして扱われる知財は、活用されていなくても見落とされ易くなるというのが現状です。

 

取締役会で工場の稼働率・在庫日数・売掛債権回転期間等は企業運営のKPIとして毎月チェックされますが、知財の活用に関する確率された指標はなく、まったく議論がなされていないのではないでしょうか。また、私の知る限り、経営学のどの本にも知財の活用を経営の重要指標とはしていません。

しかし、バランスシート上評価ゼロの知財は、実は莫大な含み資産となる可能性があります。知財は自社で開発し自社で利用するものという自前主義で成長してきた日本企業ですが、知財は種々の活用方法があり、製造を基本としつつも知財そのもので収益を上げる積極的な活用もしなければならないと考えます。質においても量においても世界最高クラスの日本企業の特許ですが、例えば2013年度の日本の情報通信機器製造業及び電気機器製造業の全ライセンス売上(親子間を除く)が約3800億円であるのに対して米国Qualcomm社一社のそれは約5000億円となっています。こういったことの意味合いを日本の経営者は真摯に受け止め、然るべき活用アクションをとるべきです。

知財の積極活用は、取締役の善管注意義務の一つ(米国判例Du Pont v Medtronic 2013年4月はこのことを示唆)であるというくらいの意識が日本の経営陣及び株主の間に高まれば、日本の知財の流通はもっと高まるものと思います。そして知財積極による高い収益を、知財を創出するエンジニア・デザイナー・クリエーター・知財担当者の収入や雇用の増加に繋げることにより、日本を真の知財立国としていきたいと思っています。