第2回知財立国研究会シンポジウムにおける議論の概要

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各界を代表するパネリストの議論による見解は以下に集約される。

第1部:知財立国のための特許行政・司法に関する日本の課題

[特許行政の課題]
・世界の企業資産は有形資産から無形資産へと比重を移しつつあり、大企業の多くは特許を主とする無形資産が50%を越えるようになった。知財の経済価値が急速に高まり、侵害訴訟における損害賠償額が跳ね上がったからである。企業は自己に有利な国(知財システム)を選ぶ。日本の特許行政はこの面で世界に遅れをとって世界市場から見放されつつあり、世界を視野に入れた国家戦略が急務である。そのためには行政システムと法律の同時改正が必要である。特に、①訴訟裁判の迅速化、②損害賠償の高額化(世界水準並み)、③世界の裁判をリードすべきわかり易い判決(英語、簡潔、口頭弁論)、④これらを支える金融・経済学者などの専門家の活用、客観性を持った評価方法、などが必要とされる。
・改革に際しては、知財システムは“国営サービス産業”との認識が不可欠である。そのためには、①国際動向に通じ専門性を備えた人材の官民交流、②国家戦略に基づいた組織やシステムの改正、③それらを実現するための法律の改正、④経営者や株主の意識改革を伴う産業界の自助努力など、幅広い改革を一体化して進める必要がある。

[司法の課題]
・数年前に設置された専門裁判所としての知財高裁は、専門性を備えた裁判官が迅速に訴訟を裁くことで大いに効果が上がった。しかし専門分野への偏り、世界的視野を欠く判決も多くみられ、人事の官民交流、任期の改善などが必要と思われる。

[課題解決に向けて]
*これらの課題に対してフロアからは以下のような提案や質問がなされた。
・改革案の方向付けに民間の意見を反映すべき。
・改革を進めるには政治家への働きかけ(ロビー活動)が必要ではないか?
⇒産業界は経団連や商工会議所など業界団体を通じて意見具申や働きかけを行っている。しかし、企業単位では村八分を恐れ突出した行動を嫌う風潮があり、ダイナミックなスピードある改革が難しいのが実情である。
⇒若い女性の活用など社内の人材活用を活性化することにより、内なる変革を促すのも有効かもしれない。
・裁判審理が書面中心でありダイナミックさに欠け、世界の関心を惹かない。
⇒ITを活用しPPTなどを駆使して活発な公開裁判にすべきである。
・発展途上国などから日本の知財裁判に学ぼうとしても、読んでわかりにくい判例
⇒英語でわかり易い表現・構成にするなど、発信方法を考えた判決
⇒示したい訴訟をどんどん起こして欲しい。早稲田大学では英語でわかり易い判決などの研究をしているが、乏しい予算・寄付で研究活動に限界がある。産業界の理解が高まり、研究基金などの拠出が望まれる。
・課題を具体的に整理して世界へ発信すべき
・世界市場を考えると、英語出願を基本としたクレーム作成を考慮すべきである。
⇒知財裁判のあらゆる分野での英語化は避けて通れない。国家戦略として進めるべき。
・改革では人材交流が鍵となる。性別や分野を越えた産官学の人事交流に期待したい。
⇒日本の国際競争力は2周遅れ、なぜ多くの法律家は保守的なのか?東日本大震災に照らし合せると、専門家も知財村に陥っていないか?危機意識が薄いように思われる。本日の議論を通じて立法の国際競争力を回復すべく、更なる改革のスピードアップを進めてもらいたい。

第2部:知財収益化のための具体的ビジネスプラン

[知財をめぐる世界の潮流]
・レーガン政権の下、米国がプロパテントに転じてから知財価値が高騰し、経済の価値基準がハードからソフトへと移行した。その原因は製品の標準化と新興国の台頭により市場規模が巨大化し、変化がスピードアップしたためである。その変化に連れて、知財市場に金融機関、投資家、経済学者などが参入し、知財にも市場原理が働き始めた。新しいビジネスモデルのパテントトロール、オークション、ブローカー、アプレイザーが出現した。知財戦略も高収益分野に集中したポートフォーリオ、攻撃型集中的重複出願、ライセンス収入に企業数や時間を加味した戦略FRAND方式、さらに最新企業情報入手などを加味した戦略へと発展している。
・このような変化を受けて日本にも具体的な知財収益化のビジネスが生まれつつある。具体的には、①既存技術の活用(有用知財の掘り起しと買取り)、②オープンイノベーションによる新技術の研究・開発、③知財の流通促進(大市場、経済的評価、流通システム)によるものである。

[知財をめぐる世界の潮流]
・パネラー各社は上記をそれぞれの得意分野で具体化・専門化し、顧客の戦略的コンサルティション、経営陣・株主の意識改革、知財収益最大化の税務対策、自動分析システムと評価方法、知財分析と知財戦略構築などで活躍し、具体的アプローチを通じて第1部で提起された諸課題への解決・貢献を目指している。